SSブログ

星に願いを/インプレッサのグリル [インプレッサ・WRC・STI]

ここのところ、ブランド戦略の相談や研修の話をいただく機会が続き、
あらためてブランディングの勉強をしています。
そして思い出したのが、もう10数年前のスバルのデザイナー時代の話。
今では信じられない話ですが、その当時「あの六連星があるからイメージが悪くて売れない」という営業現場での意見が多く、国産メーカー他社のように、メーカーロゴ、ファミリーブランドロゴでなく車種ごとの個別ロゴをデザインして、個別車種専用オーナメントとして車両前後に装着する方針となりました。wrx_gril.jpg
ブランドマネジメントやブランド戦略という言葉も浸透せず、会社名ロゴを見直しCI(コーポレートアイデンティティ)を強化する会社が多かった頃の話ですが、旗艦車種であるSVXから、レガシィ、ヴィヴィオに至るまで個々のオリジナルマスコットオーナメントが次々にデザインされていました。
しかも、遠目に見ても明らかに異なるよう意図的に輪郭も変更し六連星のベースとなる楕円の輪郭ではなく、五角形ホームベース型などをモチーフとして検討が進められました。
インプレッサ開発当時は、初代レガシィがWRC(世界ラリー選手権)に参戦準備している頃で、インプレッサがWRC次期戦闘機としてターボモデル(後のWRX)が控えていました。imp_uk.jpg
「このクルマがWRCで活躍すれば、海外で装着する六連星の方が認知され、モータースポーツファンへの訴求から、国内市場、一般への意識変化につながるはずだ」とデザインの師でもある先輩デザイナーと話していました。そこで考えたのが六連星と同じ楕円輪郭で、同じサイズの個別ブランドデザインのオーナメント。輪郭を楕円とすることは社の方針としては例外となりますが、その中のモチーフを変えオリジナルの「i」マークとすることを承認してもらいチームでデザインを進めました。
「きっと世界ラリー選手権で活躍すれば海外での人気も高まるだろう。そして、その海外での人気を知った国内のラリーファンが、六連星のオーナメントをディーラーで交換できるようにしよう。」というように、将来的にオーナメント単体だけでもオプション販売してオーナーが自分の意志で交換できるように配慮するというアイデアでしたが、当時メーカーロゴのオーナメントをオプションで販売するという発想が無かったので、用品部門を説得しながらの個別車種オーナメントのデザインワークが進められました。
cherry.jpg
するとクルマの発売直後から、この車種に限っては、最初からオーナメントをオプション購入する方も多く、更にはラリーで活躍するにつけメーカーの車種ごとの個別ブランドデザインの話も消えて、いつの間にか最初から誇らしげに六連星が装着されたクルマへと落ち着いていきました。そしてついには限定車ではチェリーレッドのカラーのオーナメントが登場するなど、その六連星のバリエーションも広がりを見せました。

六連星オーナメントが装着されたフロントグリル本体のデザインについても、バブル好況の世の中にあって会社の業績不振が続いた暗い時代に、このクルマ(インプレッサ)が明るい彗星として登場することを象徴するように、六連星の楕円を包む彗星のようなフィンが左右に広がるデザインとなっています。“メーカーロゴを彗星のように掲げて世界で闘うクルマ”のグリルとしてのメッセージが込められていました。

当時は意識していませんでしたが、今になって思えば、その思い、当時の行動自体がブランドを作り出す行為“ブランディング”そのものだった様に思います。この懐かしいエピソードを思い出して、この不況下で、いかにメーカーの活動や目標が、自分たちを信じて、いかに“ブレずに”進んでいけるかどうかが、ブランド戦略となることを改めて思い直しました。

ブログランキング参加してます。 
ぜひ、クリックをお願いします!
にほんブログ村 デザインブログ プロダクトデザインへ click!
nice!(5)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:自動車

nice! 5

コメント 4

caltec

グリルの形にそんな経緯があったとは・・・(涙
やはり初代インプレッサは最高です。
関わった方々の熱い思いが伝わってきます。
水鳥が飛び立つような美しさとのバランスが絶妙でした。
色々な逸話にモノづくりって素晴らしいなと感じます。
教育の現場でもこういった話を子供が聞けると良いですね。
そういえばVIVIOも楕円形だったような気がしますが、そっちも六連星装着を意識してたんでしょうか?
サファリで若きマクレーがVIVIOでセリカを追い回していたのが懐かしい。
by caltec (2009-11-17 01:41) 

teshima

caltecさん、コメントありがとうござます。
VIVIOのRX-Rもほぼ、同時期に開発が進みました。
WRXとRX-Rは兄弟みたいなもので、両チームが反骨気味に、
悪あがきで「せめて楕円を!」と願いを込めました。
by teshima (2009-11-17 15:03) 

ひろま

私のインプレッサも六連星に換えてましたw

当時は単純にそっちの方がカッコいいと思ったのですが、、、
そうか~元からそっちに合わせてデザインされてたんですね~
納得しましたw

VIVIO RX-Rは親友が乗ってましたねw
よく一緒に走ってました。
乗っても正にミニ・インプレッサって感じでしたよね~♪
あの頃のスバルは良かった(苦笑)
by ひろま (2009-11-17 18:57) 

いちろうさん

グリルのデザインにはそんな想いがあったのですね。
やっぱりどんなことでも自分の想いとして貫くべきところは貫かないとですね。

私も付け替えようと思って六連星のオーナメントを手に入れました。
買ったは良いけど、今度は"i"マークを外すのがしのびなくなって、結局六連星オーナメントは箱に入ったまま現在に至っています(^_^;)

by いちろうさん (2009-11-19 23:23) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。